労働基準法第33条による「災害時の時間外労働等」とは~建設業の除雪作業~

働き方改革関連法による改正後の労働基準法により、時間外労働の上限規制については、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)からすでに施行されています。

時間外労働の上限規制が適用猶予されていました建設業(他、運送業務や医師)も、来年2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されます。これにより、中小企業の建設業は、人手不足や納期のひっ迫等が原因で発生する時間外労働を削減しなければなりません(2024年問題)。

本記事では、労働基準法第33条による「災害時の時間外労働等」についてご案内します。 こちらの内容が、根本的な2024年問題の解決策という話ではありません。         しかし、北陸地方の石川県は、冬になると大雪が降ることも少なくない地域ですので、冬季に除雪作業の仕事の要請が入る企業様はぜひ、ご確認下さい。

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
労働基準法第33条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
雪害などの災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合、労働基準法第33条に基づく手続きを行うことで、原則の法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させることができます。
この場合、時間外・休日労働に関する協定(36協定)や、時間外・休日労働の上限規制にかかわらず、時間外・休日労働をさせることが可能となります。
建設業のお客様から『この雪害とはどのレベルのものなのか?』というご質問をよく頂きます。結論から言うと、許可基準の雪害については、道路交通の確保等人命又は公益を保護するために除雪作業を行う臨時の必要がある場合が該当します。一方、 単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は、第33条の「災害時の時間外労働等」には該当しません。
具体的には例えば、次のような場合には許可基準の「雪害」に該当すると考えられます。
・ 安全で円滑な道路交通の確保ができないことにより通常の社会生活の停滞を招くおそれがあり、国や地方公共団体等からの要請やあらかじめ定められた条件を満たした場合に除雪を行うこととした契約等に基づき除雪作業を行う場合
・ 人命への危険がある場合に住宅等の除雪を行う場合
・ 降雪により交通等の社会生活への重大な影響が予測される状況において、予防的に対応する場合
・急な降雪によって、通常の社会生活の停滞を招くおそれがあり、市町村からの除雪の要請があるような場合など、臨時の必要があり、人命や公益を保護するための必要がある場合
建設業で、冬季は市から除雪作業の要請が入るため、除雪作業が業務の一環という企業は多いと思います。
最低限の人員で業務の対応をしている企業は、急な依頼の除雪作業で時間外・休日労働に関する協定(36協定)の上限を超えてしまうことも考えられます。
その際は、前述の通り、労働基準法第33条に基づく手続き(様式第6号「非常災害等の理由による労働時間延長、休日労働許可申請書・届」)を所轄労働基準監督署長に提出することが必要です。 様式第6号は事前に提出して労働基準監督署長の許可を受けることが必要ですが、事態急迫のために事前の許可を受ける暇がない場合も多いはずです。その際は、事後に遅滞なく提出しなければなりません。

また、除雪作業には、その作業前にパトロールなど付随した作業があると思われます。その作業時間は第33条の適用が認められるかについてですが、除雪とは全く関連のない時間外労働は論外ですが、基本的には除雪に関して付随業務も含めて幅広に第33条の適用が認められうると考えられますので、労働基準法第33条に基づく手続きの際は、除雪作業と除雪作業に必要な付帯業務に要した時間外労働の時間を適切な範囲で記載し、申請・届出することになります。

労働基準法第33条に基づく手続きにお困りの企業様や36協定の作成締結・届出でお悩みの企業様は、泉野社会保険労務士事務所にお気軽にご相談ください。