【2024年4月1日~】労働条件明示のルールが変わります

【2024年4月1日~】労働条件明示のルールが変わります。

「労働基準法施行規則」と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正に伴い、労働条件の明示事項等が変更されることとなります(2024年4月1日施行)。
企業は、労働条件の明示事項やそのタイミングについて、見直しが必要になります。

厚生労働省は、令和5年3月30日付けで厚生労働省令第39号を公布し、労働基準法15条の労働条件明示に関し、具体的な明示事項を定める労働基準法施行規則5条を改正して、明示事項の追加などを公表しておりましたが、この度、具体的な運用に関する通達を発出し、かつ「(厚生労働省)令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A 」も出されました。

本記事では、労働条件明示の制度改正と運用ポイントについてお伝えします。

1.労働条件明示の制度改正と内容

現行に追加して明示しなければいけない労働条件明示事項は表のとおりです。

有期契約または無期契約にかかわらず、すべての労働者の「労働契約の締結時」と、有期契約者の「労働契約の更新時」に、就業場所・業務の変更の範囲を明示する必要があります。

また、有期契約の場合は「労働契約の締結時」・「労働契約の更新時」には、更新上限の有無と内容を示さなければいけません。なお、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約更新時には、無期転換を申し込むことができる旨も伝える必要があります

1-1.改正による追加の明示事項「就業場所・業務の変更の範囲」(対象:すべての労働者)                          「就業場所と業務」とは、労働者が通常就業することが想定される就業場所と、労働者が通常従事することが想定される業務のことです。
配置転換先や出向先の場所や業務は含まれますが、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が一時的に変更される際の、一時的な変更先の場所や業務は含まれません。                                  「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の変更の範囲のことをいいます。
テレワークを雇入れ直後から行うことが通常想定されている場合は、「雇入れ直後」の就業場所として、その労働契約期間中にテレワークを行うことが通常想定される場合は、「変更の範囲」として明示する必要があります。具体的な就業場所については、労働者の自宅やサテライトオフィスなどが考えられます。      厚労省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更備えは大丈夫ですか?」より抜粋

1-2.改正による追加の明示事項「更新上限の有無と内容」(対象:有期契約者)                有期契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合には、その内容の明示が必要になります。                更新上限の明示の例 )「契約期間は通算3年を上限とする」「契約の更新回数は3回まで」等また、次の①②に該当する場合は、「更新上限の新設する前」「短縮をする前」のタイミングで、更新上限を設定する又は短縮する理由を労働者に説明することが必要になります。
① 更新上限を新たに設けようとする場合
② 更新上限を短縮しようとする場合・・例)通算契約期間の上限を5年から3年に短縮等  更新上限の新設・短縮の理由を説明する際は、文書を交付して個別面談等により説明を行う方法が基本ですが、特定の方法に限られるものではなく、労働者が容易に理解できる内容の資
料を用いる場合は当該資料を交付して行う等の方法でも差し支えありません。

1-3-1.改正による追加の明示事項「無期転換申込機会」(対象:有期契約者)                 「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、該当する有期契約の契約期間の初日から満了する日までの間、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)を書面により明示することが必要になります。初めて無期転換申込権が発生する有期契約が満了した後も、有期契約を更新する場合は、更新の都度、明示が必要になります。

1-3-2.改正による追加の明示事項「無期転換後の労働条件」(対象:有期契約者)               「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を書面により明示することが必要になります。明示する労働条件については、労働契約締結の際の明示事項と同じです。                                       厚労省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更備えは大丈夫ですか?」より抜粋

2024年(令和6年)4月以降は、無期転換後の労働条件について、            ①無期転換申込権が生じる契約更新時                         ②無期転換申込権の行使による無期契約の成立時
①②それぞれ明示する必要がありますが、①の段階で、労働条件の内容を適切な方法で行っており、かつ、②で成立する無期契約の労働条件と全く同じ場合は、②の段階では、すべての事項が同じであることを書面の交付等により明示することで対応可能です。

2.令和6年4月1日~労働条件明示の運用ポイント

Q.労働条件明示追加事項は2024年4月以降、全労働者に明示するのか?

A.すでに雇用されている労働者については、就業場所の変更範囲の明示など、新ルールに対応した条件明示を改めて行う必要はないです。2024年4月以降に労働契約を新規で締結する場合・労働契約を更新する場合は、新ルールの対象になります。

Q.契約の開始時期が2024年4月以降の労働契約において、追加事項を明示すればよいか?

A.その通りです。ただし、契約の開始時期が2024年4月以降であっても、2024年3月以前に契約を締結した場合は新ルールによる明示は必要ありません。

Q.新たな明示事項である就業場所・業務の変更の範囲について、有期契約の場合、どこまで明示する必要があるか?

A.締結した契約の期間中における変更の範囲のみで良いです。例えば、1年契約の有期労働契約を結ぶ際、更新した2年目以降の契約期間中に命じる可能性がある就業場所・業務の明示までは求められません。

Q.無期転換申込権を申し込みたくない契約社員には、本人の意思によるものだから明示しなくてもよいか?

A.無期転換申込権が発生する契約の更新時については、申込権を行使しないことを表明している有期契約労働者に対しても、転換申込機会の明示は行う必要があります。

さいごに

泉野社会保険労務士事務所では顧問先の入社・契約更新時の労働条件通知書の作成サポートを行っております。次のようなニーズがある場合は、労務管理を実務経験豊富なプロの社労士にアウトソーシングすることで、法改正に適切に対応できるだけではなく、人事労務・総務のご担当者のお仕事がグンと楽になります。

  1. 「契約書を交わす前に内容のチェックをして欲しい」
  2. 「労働条件だけ伝えるので、契約書の作成は、丸ごとプロに任せたい」
  3. 「頻繁に改正がありすぎて自社の対応が不安だ。ポイントを絞ってサポートしてほしい」

労務管理にお困りごとがある方や気になることがあるかたはぜひ、一度お気軽にご相談下さい。