石川労働局は2023年8月8日、石川県内の最低賃金を現在の891円から、過去最高となる42円引き上げ、時間額933円とすることを発表しました。
最低賃金の42円の引き上げは、昨年(2022年)の30円の引き上げを上回る過去最高の引き上げ額となり、引き上げ率は4.71%となります。
石川労働局では、今回の引き上げによって県内の事業所で働く労働者の約17.12%が影響を受けるとしています。
最低賃金933円への引き上げは、早ければ10月4日に発効されます。
厚生労働省 石川労働局 Press Releaseより
1.最低賃金とは
最低賃金とは、最低賃金法に基づき賃金の最低基準を定め、労働者に最低賃金額以上の賃金を払わせる制度です。
毎年、この秋頃に最低賃金が改定されます。
最低賃金額を下回る賃金を支払っている状態になると、最低賃金法により無効とされ、最低賃金額と同額を支払わなければなりません。
なお、最低賃金額を支払っていない場合の罰則は、50万円以下の罰金です。
参考)『最低賃金法 第4条(最低賃金の効力)』
第1項 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
第2項 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
2.最低賃金額の種類
最低賃金には、次の2つがあります。
(1)地域別最低賃金・・都道府県ごとに定められる全部で47の最低賃金
(2)特定最低賃金・・特定地域内の特定事業別(特定産業別)又は特定職種別に定められる最低賃金
(1)地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47の最低賃金が定められています。なお、地域別最低賃金は、労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力、を総合的に勘案して定めるものとされています。
(2)特定最低賃金は、特定の産業について、関係労使が基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めるものについて設定されています。
3.最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金になりますが、計算をする際に、次の賃金は除外して計算します。
●最低賃金の算出時に除外する賃金
1 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
2 時間外割増賃金
3 休日割増賃金
4 深夜割増賃金
5 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
6 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
4.最低賃金の算出式
最低賃金を計算する際は、毎月支払われる基本的な賃金から、上に記した賃金を除外して、次の計算式を用いて、実際の賃金が最低賃金を上回っているかを確認します。
(1) 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2) 日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)
(3) 月給制の場合
月給÷1か月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
賃金総額(※1)÷総労働時間(※2)≧最低賃金額(時間額)
(※1)出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額
(※2)当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数
(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合
それぞれを時間額に換算し、合計した額≧最低賃金額(時間額)
次のサイトに、月給制や歩合給制の最低賃金の確認方法の例がありますので、具体的な計算をされる際にご確認下さい。
厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」
5.最低賃金の改定に伴い、人事労務のご担当者がチェックするポイント
☞最低賃金の基準に達するか確認
最低賃金の改定に伴い、社内の従業員が、最低賃金を下回らないかを確認する必要があります。
時給者や日給者の賃金は、気を付けやすい最低賃金ですが、月給制の場合は、時間給換算して最低賃金を確認する必要があります。
確認漏れがないかお気を付け下さい。
☞派遣労働者の最低賃金
派遣労働者には、派遣先の事業場がある都道府県の地域別最低賃金もしくは特定最低賃金が適用されます。
厚生労働省HPより
☞賃金規程の見直し
最低賃金の改定に伴い、現状の賃金表では最低賃金を下回ってしまう、または最低賃金額を記載した賃金規定の場合は、見直しが必要となります。
☞求人票の賃金額の見直し
最低賃金で求人を募集している場合は、求人票の賃金額の見直しも必要です。
☞業務改善助成金
業務改善助成金を最低賃金の改定のタイミングで活用される企業様は多いです。スケジュールもありますので、生産性向上や業務効率をあげる設備導入に使える助成金を検討中の企業様は早めのご準備をすること、または社会保険労務士に相談されることをオススメします。
業務改善助成金の活用記事はこちら 「助成金について知りたい!」「助成金を活用したい!」という石川県内の企業様・事業主様へ
- 6.最低賃金の減額の特例許可制度
一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、特定の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
【最低賃金額の減額の特例許可要件】
●精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
●試の使用期間中の者 ※
●基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受ける者
●軽易な業務に従事する者
●断続的労働に従事する者
※「試の使用期間中の者」とは、試用期間中の全ての方が対象となるわけではありません!
減額の特例許可の対象となる「試の使用期間」とは、当該期間中もしくはその後に本採用をするかどうかの判断を行うための試験的な使用期間で、就業規則等で定められているもののことです。
ただし、減額の特例許可の対象となるのは、次のように「試の使用期間」中に減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に限られます。
➀申請のあった業種又は職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること。
➁申請のあった業種又は職種の本採用労働者に比較して、試の使用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在すること、など減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性があること。
最低賃金の改定の時期は、賃金の見直しや労働時間の相談が多く寄せられます。
泉野社会保険労務士事務所では、石川県内の企業様における労務管理の様々なお悩みに丁寧にご対応します。
・ネットを調べながらやっている自社の労務管理の対応で正しいのか?
・従業員の人数も増えてきたので、顧問社労士をつけて企業の体質を強化したい。
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